アレルギー反応のしくみ
今回は花粉を例にとってお話しします。
私たちの体の中では、マクロファージという細胞や好中球（白血球の一種）が、異物が侵入してこないか、常に巡回パトロールをしています。異物が侵入したときに真っ先に駆けつけるのがこれらの貪食細胞（どんしょくさいぼう）と呼ばれる細胞なんですね。
花粉がたくさん飛んでいる時期に屋外で活動していると、呼吸しているだけで鼻や口から花粉が入ってきますよね。
この花粉は鼻やのどの粘膜に付着します。するとマクロファージや好中球がやってきて、「こいつは侵入者だな」と判断すると食べちゃいます。食べて分解して、この侵入者の情報を得ます。
そしたら、その情報を司令塔であるＴ細胞（リンパ球の一種）に伝えます。情報を受け取ったＴ細胞は、Ｂ細胞（リンパ球の一種）に「変なヤツが来たから、対抗できる抗体を作れ！」と指令を出します。
Ｂ細胞は情報を受け取ると、凸と凹のように抗原（花粉）とぴったり合う抗体を産出します。
この抗体は、抗原の種類によって全て形が違います。鍵と鍵穴のように少しでも違うと役に立たないので、正確に作られます。
例えば、スギ花粉の抗体はスギ花粉にしか対応しないってことですね。
産出された抗体は、抗原と結合して免疫複合体となり、これをマクロファージなどが処理をして事なきを得ます。
この抗原が抗体を結合することを抗原抗体反応と呼びます。
ここまでの状態ではアレルギー反応は起こりません。
今回の情報を受け取ったＢ細胞は、形質細胞という細胞に分化（変化）しています。言い換えると、今回の侵入者に対する抗体のみを作る係となったわけですね。他の抗原に対応するのは、また別の形質細胞です。
しかし、この形質細胞の寿命は4週間程度です。また同じ侵入者が来る時まで存在しているか？というと微妙ですよね。
そこで、別のＢ細胞の一部が、この1回出会った異物の情報を持った記憶細胞として体内に残るのです。この細胞は長い期間存在し続けます。
…この部分、1個の細胞の寿命とか、細胞分裂するのか？記憶を残す方法があるのか？とか現在も研究中で完全に解明はされていませんが、長期にわたって体内に存在することは確かです。
再度同じ花粉が侵入してきた事を感知すると、この記憶細胞は「アイツが来たぞーー！」と形質細胞に分化（変化）して素早く増殖します。そして一気に抗体産生を行うのです。
前回は突然のことだったのでアタフタしたけれど、今回は事前に情報があるのでガンガン作れるぜ！といった具合です。
抗体（IgE）は血液の中を流れて、血液中の好塩基球や、粘膜のすぐ下にいるマスト細胞（肥満細胞）の表面にあるIgE受容体と結合して花粉を待ちます。そこへやってきた抗原である花粉が合体します。
この事態がマスト細胞内部に伝わると、マスト細胞がヒスタミンなどアレルギー反応を引き起こす物質を大量に放出するのです！
マスト細胞の表面には、ヒスタミンを受け取るための受容体がたくさんあります。放出されたヒスタミンは血液中を漂って、ヒスタミン受容体と結合します。マスト細胞はこの結合の刺激で更にヒスタミンを放出します。
すると近所のマスト細胞が「あれっ？一大事か？そうだな！俺もやらなきゃ！」とヒスタミンを放出します。更にその近所の……と連鎖的に放出が起こります。
この連鎖によって過剰に起こる反応がアレルギー反応です。
アレルギー物質は花粉ですよね。でも花粉がかゆみやくしゃみを起こしている訳ではなくて、過剰な免疫反応がアレルギー反応の正体ですね。
本来、抗原抗体反応は生体防御のシステムです。例えば細菌が体内に侵入してしまい、そのまま増殖を続けると、貪食細胞（マクロファージや好中球）だけでは対応できなくなり、生体の生命を脅かすことになります。
以前にやって来た異物を記憶して、今後に役立てるというありがたい機構なのです。
このシステムを利用したのが、予防接種です。あらかじめ少しの菌やウィルスを体内に入れて抗体を作っておき、万が一罹患したときに重大事にならないようにするということですね。
他の細胞よりとっても大きいんです。それで命名した人が肥満細胞という何ともセンスがいいのか悪いのか
気になる名前をつけたんですって。次のページは[ヒスタミンが引き起こす生体反応]です
